新録ベスト盤『Nightfriend of ZOOBOMBS』についてとことん語る、ドン・マツオ ロングインタビュー! |
Interview with Don Matsuo @20091020 byヨシタカ ―今、ベスト盤を作ろうと思ったきっかけは? DON(以下D):ベスト盤の企画自体は今年の頭くらいからあって、オレはソロやツアーをやってたから、マッタちゃんとムー氏に選曲を頼んでたんだけど、いざ本気で取り組まなきゃならなくなった時に、全然興味がなくなってねー(笑) ―いつもそのパターンですね。(笑) D:ウン。昔を振り返るという作業がとことん退屈でねー。向いてないんだな。その上、その当時の音源自体も気に入らないし、聴きなおすだけでもゾッとしちゃうからね。(笑)でも、せっかくドラマーもピットで落ち着いてきて、バンドも新しいタームに突入してるから、ライブでやり続けてる曲をひとまとめにしたいなと思ったんだよ。何しろ長い歴史があるからさー。(笑)始めての人にも「ハイこれ」と1枚で済むようなレコードがあると、とても良いじゃない?それでも過去の音源を1枚にまとめると、どうしてもバラバラな感じになっちゃうし、大体ドラマーが違いすぎるしな。(笑)あー面倒くさい面倒くさい…………じゃあもう全部新録にしてしまえっ!って事。(笑) ―それまた、いつもそのパターンですね。(笑) D:そうね。でもこれでようやく1枚にまとめる事ができて、本当に嬉しい。マイルス・デイヴィスが言うところの「これで過去のBook(本)は閉じられた」ってヤツだね。ここからスタートということで、ひとつ。 ―(笑)レコーディング作業はどうでした?最初は15周年の9月9日のライブ音源をベスト盤にするという感じに思っていたんですけど、これ完全に新作レコーディングですよね? D:そうなんだよ。最初はライブやってそのままレコードにしてしまおうと、例によって安直に考えていたのだけど、やり始めたら止まらなくなってさ。一晩で録るつもりが、結局普通にアルバム作るだけの労力がかかったよ。だいたいライブでやり続けている曲群だから、より分かってきてるしねー。リズムとかさ。なんかハードルがすごく高くなっちゃって。 ―それは感じましたね。それぞれの曲の解釈が深くなっているというか。一面をより深くした感じのものが集まっているなと。 D:そうなんだよね。そういうの、最初に作ってレコーディングした段階ではあんまりわかってないんだよね。無意識の領域があって、「なんかちょっと目標に届かないなー」と感じながら作っちゃうんだよ。でも、それをライブでやり続けていくうちに無意識の部分が顔を出し始めて、シッカリした血と肉がついてくる。「なるほど、この曲はこうやりたかったんだな」って分かってくるんだよ。最初からわかってりゃ良いんだけど、なかなか。 ―長いことライブでやってる曲ですもんね。めずらしいのも入ってますが……。Builbone Bluesとか。 D:Builbone Bluesは完全に選曲外だったんだけど(笑)、何故かレコーディングする朝に閃きがあって……、神様のささやきと言っても良いんだけど(笑)。お菓子の名前みたいだけど。とにかくその日にJeffなんかもやったんだよ。 ―Builbone Bluesかっこいいですね。よりブルージーになって。 D:ねー。誰が書いた曲かっつー位かっこいいね。(笑)だいぶ好きだねオレは。最初に録ったのはカセットテープの時代で、Welcomebackにも入ってるけど、オリジナルはなんかフェイクみたいな感じでね。当時、ジョン・スペンサーとかベックとかみたいな流れの中から出てきたんだろね。「今の」フェイク・ブルースみたいな。でも今の俺たちは、ちょっと「本物」っぽい感じでプレイできるんだよねー(笑)。ギターがなんとも……ハハ。あと、CircleXもオレのお気に入りだな。全然違うでしょう? ―違いますね。 D:Circle Xなんかは正直言って、当時(Bomb Freak Express:99年)はオレの頭で思い描いていてた事が上手く表現できなかったんだよね。バンドのスキルも足りなければ、オレのイメージ力も不確かで。新しいヴァージョンは、最初思っていたのにずっと近いね。トランシーで混沌としててファンキー、かな。でも、当初はこれも選曲外だったんだよ。Mo’FunkyとかTalkin’bout Americaとか、ああゆう長めの大曲が3曲も1枚に入るとtoo muchかなと思って。でも、結局避けられなかったねー。Circle Xはズボンズの超重要曲だからさ。 ―まったく。僕1回しか聴いてませんけど、どの曲も「今」の感じが強くしました。ドンさんのソロとかBBB以降、最近のライブの感じとか。 D:そうだね。とりわけ6月のカナダツアー前後でバンドが大きく変わったのは確かだな。だからこそ新録にしようという強い動機があったんだと思う。 ―具体的に言うと? D:日本にはまだあまり伝わってないけど、北米はインディー・ロックって今すごい盛り上がっていてね。ちょど90年代のグランジ・ブームから一回りして、Indie Rockというジャンルが完全に確立したみたいな印象があったよ。日本でインディーというとメジャーにいけない人や売れない人だったり、メジャーにいく一歩手前の2軍的なステップみたいな印象になっちゃうけど、向こうじゃ本来の名の通り独立(indipendent)しているということなんだよね。何にも所属せず、自分たちがやりたいことをやりたいようにやるために、そういう選択をしているという感覚。だから姿勢が全然違う。それをきちんとわかってサポートしてくれる人たちもいっぱいいるし、ナチュラルに成立していてうらやましいくらい。 ―それは良いですねー。日本では必ずどこかに所属してますもんね。 D:ね。だから今の向こうの若いインディーの人たちはメジャー指向とか、popスターみたいに有名になりたいという動機で音楽やってる人は少ないんじゃないかな。やりたいことをやる、だからインディなのだ、という選択なんだよね。幸いオレ達は、必要に迫られてだけど(笑)、完全に独立しているでしょう。やりたいことをやりたいようにやっている。だからその姿勢にすごい共鳴する部分もあったし、勇気づけられたりもしたなぁ。とにかく、アメリカの今のすごいパワーを持っているバンドとやったりして、ものすごい刺激を受けたよ。オレ達はこういう方向で、こういう考え方で音楽をやらなきゃいけないなと思った。とことんやり切らないと駄目だなって。 ―海外にむけてということですか? D:ウーン、というより音楽活動に向かう姿勢の問題だね。日本であれ、海外であれ、いちミュージシャンとして自分たちがやることをどれくらい高められるか、やり切れるか、楽しめるかが問題なんだよ。まぁだから過去にやってきたことなんてどうでも良いつーか(笑)、やっぱ常に先を向いてないとさー。 ―曲作りやアレンジの仕方なんかも影響うけてます? D:うーん、どうだろうな?ズボンズにアレンジというのが存在するのかどうか。ここのとこやっている感じでしょう。ナチュラルにやってるからね。 ―ライブの後に録音していたりしたので、もっとシンプルな感じなのかと思ってましたけど。 D:そのつもりだったんだけど(笑)。普通のアルバム一枚作るのと同じくらいの労力がかかったね。助かったのは歌詞を書かなくてすんだことくらいかな(笑)。アレンジはないけど、活動の全般的な方向性は、向こうで影響受けた部分は大きいかもね。型にはまっていた部分を全て開放してしまえ、みたいなところがある。みんなさ、「ロックやってる」なんていってもはっきり言ってしまえばただ曲やっているだけでね。ステージ上がって、セットリストがあって。MCなんかも決まってて白ケタもんだよ(笑)。それがダメだというよりも、なんか気持ちの高まりみたいなのから離れてて、変にプロっぽくやろうみたいな感じが嫌なんだよね。もうちょっとナチュラルな感じでできないものかなと思う。すごいはじけてバカなことやってたりするやつもいるけど、それがナチュラルかというと、なんと言うか、人の目を気にしつつハメ外してる感じするんだよ。カッコ悪いでしょう、そういうのは。違和感があって。少なくとも自分がやろうとしていることとは違うなと思う。もう全然違う。 ―難しいですねー。 そうなんだよー(笑)。こっちだと(ライブを)打ち込んで一生懸命やっていると怖いとか言われるし(笑)。むこうだとやればやるだけ喜んでくれるんだけどなー。でも、オレもそんなに余命もないわけだから(笑)そういうことを気にしてる場合じゃないなと。音楽的にはまだまだやれることはあるけど。残った時間を有効に使おうと。 ―(笑)最近そう言いますよねー。何的に余命が短いんですか?すごい健康に見えますけど。 D:今、動物学に凝っててね(笑)。地球上のイチ動物として人間を考えると、これだけ長生きするのが不自然じゃない?ここ数十年でグンと寿命は延びた訳だけど、なんか人間が長生きをする前提がなんかちょっと違うのかも知れないと思う。動物的にあんまりまっとうじゃない気がする。俺もあと40年生きれるとか言われても決して嬉しくない(笑)。 ―昔の人とか寿命が短かった分、濃く生きてた気がしますね。 手塚治虫の「火の鳥」に死のうと思っても死ねない人の話があるんだけど、人間はあれに近い感じになっているのかもな。だから毎日なるべく栄養を摂らないようにして、動物的にまっとうに生きたい(笑)。まぁ大体動物は子供が独り立ちするようになったら寿命が来るからさ、オレはあと13年くらいかなーと思って(笑)。それまでチャレンジし続けなかったら、13年後は悲惨だろうな。なんのためだかわからないけど音楽やっているみたいな状況になってたりしたらさ。それは生きてても死んでいるのとさ大して変わらない。生きてるのに死んでるつーの、良く分からないな。 ―基本的にそういうスタンスは常にあります?より深くなった感じですか? D:昔からだろうけど、より自覚的になったのかも知れないな。今、ズボンズ15年やってきたけど、15年でこれだけしかできていないとかって思うところがあるもんなー。たくさん後悔もあるよ。もっと若い頃に今みたいな考えや判断があったらなぁ。と思うけど、しょうがない!(笑)今があるのも過去があるからだからさ。自分の至らなさは痛感するけど、気に入ってるしね(笑)。だからこそ、これからはもっとちゃんと頑張ろうと思います! ―より純粋にズボンズとしての音楽を突き詰める? D:そうだね。そう思う………売れないかもな(笑) ―(笑)売れて欲しいな。 D:まあね(笑)。でも歳だけはどんどんとっていっちゃうでしょう?一歩ずつ死に近づいている。やってもやらなくても結果は死ぬんだよ。あとはどれだけ満足するか。自分的な後悔とか嘘だとかをどれだけ最小限に食い止められるというか。そんな感じかなー。非常に利己的な生き方ともいえるかも知れないけど。 ―まぁ、そうですね(笑)でも、ひとつの生き方として、アリな感じがします。 D:まあ、偏った生き方だけど。オレはミュージシャンだからね(笑)。 ―「迎合してどうする!」みたいな?(笑) D:普通じゃなくても良いでしょう!オレ個人としてはナチュラルなんだけどさ(笑)。 ―なるほど。では曲ごとに見ていきましょうか。ではHighway A Go Goから。何気にこの曲とSouth Central Rockはライブとかでやっている感じより、割と原曲に近いかなと思いましたけど。 D:あれ、そうかね?High Way A Go Goは・・・なんつうの?普通だな(笑)ずっとやってる感じ。 ―(笑)この2曲は特にずっとやっているからですかね? D:うーん、どうかな。あんまり突飛なアレンジをしようという気はなかったんだよね。ただ、ライブでやっている感じをそのままやると、物凄くなっちゃって、聴いてて長くなり過ぎちゃうんだよ。 ―そうですね。そのライブのイメージがあるから原曲に近い感じと思ったんですかね? D:なんかLed Zeppelineみたいにね。(笑)基本的には、一番注意していたのはリズムの部分。実はHW55は完成した後でオレがドラムやって録り直したヴァージョンもあるんだけど、それ聴くともっとリズムの違いがハッキリするとは思うんだけどね。ものすごいアフリカっぽい感じなんだよ。まぁでも今回はマッタちゃんの「コッチの方が新しい」という意見で、コレにしました。マッタちゃんに逆らう事はできない。(笑)確かにオレドラムヴァージョンは、ちょっとヘヴィー過ぎる感じしたな。 ―それも聴いてみたいなぁ。South Central Rockはどうですか?よりグルーヴィーな感じがしますけど、オリジナルに近い感じもしますね。 D:ウン、これもオレのドラムヴァージョンが……(笑)。 ―(笑) D:実はこの曲難しくて、ライブと同じようにやってもかっこよくならないんだよ。勢いとリズムの躍動感の両立がねー。だからうまくまとまって良かった思う。後半に俺の必殺のギターソロがあってあそこがたまらないね(笑)。まあ、オリジナルと同じような感じに聴こえるならば上々かな。ベースがカックイイね。ムーストップがいないとズボンズは成立しないよ。 ―それはそうでしょう(笑)。次のBuilbone Bluesはどういうところにこだわって? D:どうもこうも、聴き所は右チャンネルのギターだな。ベースじゃないね(笑)。すんごいギターがかっこいいんだよね。 ―さっきも言いましたけど、よりブルージーですよね。オリジナルバージョン後半の爆発もない。 D:ウン、そういうのいらないって感じだな。、JeffもBuibone Bluesもこのアルバムがもうできつつあったときにふと沸いてきたんだよね。わりと特定の意図があったとも言えるね。アルバムだからこういう雰囲気の部分も必要だよなって感じ。 ―そういうの考えるとベストでありつつ、ひとつのアルバムになっていますね。 D:うん、結局アルバム作るとなると、そういうのからは逃れられないよ。ただ、曲ならべればいいじゃんみたいな意見もあるんだけど、ズボンズはライブでもアルバムでも「流れ」を重要視するバンドだから。場合によってはいらない曲もいる………Builbone Bluesがいらない曲かというと、違うんだけどさ。(笑) ―ベスト盤なのにいらない曲ないでしょう(笑)。でもかっこいいですねこれ。 D:フフ。オレのお気に入りだね。これとCircleX。 ―That’s How Strong My Love Is D:これベースメントバーのライブ後に録ったやつだよ。 ―あ、そうなんですね。あれ何時頃までかかりました?JJ(Limited Express has gone?)が半分あきれながら言ってましたよ「すごい!なんであのライブの後にレコーディングするのかさっぱりわからん!」っつって(笑) D:午前1時は回ってたと思うけど。もう演奏しているのオレとムーストップだけだったからね(笑)。だからこれはオレがドラムやってる。聴き所はドラム(笑)。さすがに良い曲だよね。偉大なオーティス・レディングのヴァージョンに乾杯ってとこかな。 ―なるほど(笑)Mo’Funkyは? D:これはやっぱりなんだかんだいって一番の難曲だったよ。なにしろ、過去も未来もズボンズの金字塔的なものになるだろうから。オリジナルヴァージョンも数少ないオレのお気に入りだしさ。だから苦労したねー。俺のドラムで3回、ピットで1回録り直して、ピットのドラムにオレがドラムやり直したヴァージョンも作ったりしたんだけど、でも最終的にピットでポロッとできたのが一番よかった。 ―曲に深化に伴うさまざまな要素もうまいこと載せられた? D:どうかなー、そうだねー。これも割にオリジナルの雰囲気を残していると思うけど、98年とは違うね。もともとの良さを今の感じでやってるってトコだね。うまく聴こえてくれれば良いんだけど。 ―きっと大丈夫だと思います。では次、Jeff。原曲と結構変わってますよね? D:なかった部分が付け足されてるしね。Jeffはなんか好きな曲なんだよね。ズボンズの曲の中では普通っぽい曲だけどな。元気よくてね。 ―それは思いました。すごい楽しげな感じがしますよね。 D:ロックっぽい感じなんだよね。まあ、でもベスト盤にジャンボを差し置いてJeffが入っているのはちょっと良い感じだなと思う。(笑) ―ドンさんが好きなんですよね?(笑) D:そうそう(笑)。でもなんでHot loveとかMojo Manとか入ってなくてJeffかよーみたいな(笑)。 ―そう考えるとやっぱり全体のバランスなんでしょうね。 D:あくまで、そこだね。最終段階で入れるか迷ってたんだけど、マッタちゃんがこれはどこでもいいから入れろっていうことでMo’Funkyのあとに無理やり入れた感じ。(笑) ―We Are Talkin’bout America。これはなんというか、ちょっと宇宙っぽい感じがしましたけど。 D:宇宙っぽいかね?(笑)まあ、そうとも言えるかもしれない。 ―原曲ともだいぶ違いますね。 D:だいぶ練ってるからね。もともとは20分くらいある長いジャムを編集して、たっぷりダビングして仕上げた感じ。"New Stone Age"から一緒にやってるエンジニアの三木くんが基本のMixをやった。これもライブでずっとやっている曲だし、人気曲でもあるから、入れるのは大前提としてあったけど、このヴァージョンに関しては偶然にできた感じかな。オレはお気に入りだね。ズボンズのメッセージソングだし。(笑) ―(笑)シンプルな。次はGet It Together。これも宇宙っぽく感じましたけど(笑) D:宇宙……。サイケデリックかも知れないけどね。どの曲もサイケ的な部分は多分にあるんだけど。 ―僕はこの辺に一番感じましたけど。We Are〜とかGet It〜のあたりに。その辺にアメリカ的な影響があるのかと思ったんですけど。 D:まぁ、あるだろうね。サイケデリックな部分は俺たちのライブにもあるんだけど、わりとそれを素直に反映させようとしていたところがある。GITもライブでやってるバージョンとか、俺がドラムを叩いているバージョンとか、何バージョンかあったんだけど、これはフォークロックっぽいバージョンだね。Byrdsとかそんなような感じに近いのかな。で、アルバムに入れるならこれかなって感じで。 ―CircleXはどうでしょう?最初散らばっているのが、曲が進むにつれて集約されていくような不思議な感じの曲だとおもいましたが。 D:オリジナルはもうちょっと構成つけてたからな。今回のはよりアフリカっぽいというか、催眠的な延々続く感じ……そういう部分はもともとあったけど、より強くなった。あの当時はスキルがなくてできなかったんだよね。 ―このやりたい感じを作ることが? D:そうなんだよ。どうしていいかオレ自身がはっきりとしたディレクションを掴んでいなかったから、みんなが分からなかっただろうな。とにかくあのアルバム(Bomb Freak Express)に関してはリズムに不満があってねー。一枚丸まる録り直したいくらい。(笑) ―どの辺がそうなんでしょう? D:オレの構想では本当はもっとアフリカっぽいむき出しのアルバムになる予定だったんだけど、割りに洗練されたものに向かっちゃって。成り行き上そうなり始めると、そこからどうやったら自分が思っているようなものにできるのかわからなかったんだよね。混乱してたなー、あの時期は。ちょうどドラマーを変えた時期でもあったし、オレも叩けなかったから、はっきりとリズムをうまく表現できなかったんだよな。正直あのアルバムからの3枚は悔いが残るんだ。 ―「Bomb Freak Express」、「Dirty Bomb」、「Love Is Funky」? D:ウン。誰もオレの思っているようにプレイできないし、自分でもどうしたらいいのかわからないと感じている時期でもあったなー。今は、自分でも叩けるし、リズムに関しても細かく説明できるし、自分で録音することもできるから。 ―もう何でもできますね。 D:なんでもできる、思いのままだよ(笑)。 ―より思い描いていたCircleXになりました? D:もう、王国へようこそって感じだよ。(笑)今だからできる感じではあるね。あの頃のアルバムに関しては心残りだね。リズムの躍動感とかをとにかく表現できなかったな。ブッカビリーでは表現できなくて、アツシはまた違うタイプのドラマーだし、ポッキーで若干持ち直したんだけど、限界もあったしね。ズボンズのリズムのワイルドな部分は8割方オレの感覚だよ。それを上手く表現できないと、ただの曲になっちゃう(笑)。普通のものじゃないからさ、キチンと説明されないと、きっと彼らにも良くわからなかったんじゃないかなという気はするね、今となっては。それができていたらもっと違うものになったと思うけど、まぁなんとも言えないなー。ただ、よかったのは、曲がたくさんできたことだね。(笑) ―しばらく聴いてないけど聴きたくなる曲が絶対ありますからね。 D:オレ達も人生のバイオリズムみたいなものがあってさ、「今はこういう感じがやりたいな」っていうのが、その時々で出てくるじゃん?そのときに新曲と昔の同じような要素を持った曲をひっぱりだしてやることでそれぞれの曲がお互いに影響しあうこともあるし、昔の曲を「今」の感覚でやることで新曲のアイデアになったりすることもある。そういう意味で曲が沢山あるのは、ありがたいね。まぁだからCircleXはいろいろ考えさせられたよ。やる前はどういう風にとるかもわからなかったけど、結果バンザイって感じだね。 ―なるほど。じゃあ、Jamie。 D:Jamieはなんか……いいなぁと思って(笑)。ホっとしたいい感じになっている。 ―なんかちょっとカントリーっぽい要素もありますかね。 D:そうかも知れないね。どうとでも解釈できるような曲だけど。どっちのヴァージョンも良いかな。でも、今回のアルバムに関してはオリジナルの方が良かったと思うものはほとんどないね。長いことやっているからいらない部分が落ちているのかも知れない。Jamieはマッタちゃんのコーラスが良い。 ―聴きどころはそこですか? D : ズバリそこだね。ギターソロないしね(笑)。 ―次、4190。僕、この曲知らなかった。Bomb The Bombのシングルのカップリング曲ですよね? D:やっぱマッタちゃんの可愛い部分がないとズボンズとは言えないからな。(笑)これはカオシレーターだけで作ろうと思って、リズム作って、別のリズム重ねて、ベース入れて、逆回転して、マッタちゃんを仕事の合間に呼んで歌いれて終わり。30分くらい(笑)。 ―早!(笑)マッタさんのコーラスは全編で活躍してますよね。BBBからの傾向ですかね。 D:そうだね。ズボンズがハードに行き過ぎるのをギリギリのとこで食い止めてくれるのは、やっぱマッタちゃんだろね。 ―最後、DON’s Dream。 D:うん、これで終わるしかないなと思ってた、ベストアルバムは。元々すごい古い曲なんだよ。HW55よりも前、最初のカセットに入れてた曲だもんな。スワンプがズボンズの最初の曲で、DON's Dreamは4番目くらいじゃないかな?最初のライブ(新宿Jam)でもやったの覚えてるよ。だから思い入れが強いね。 ―ライブ盤(bomb you live)でも最後でしたもんね。 D:あぁ、そうだったっけ?マッタちゃんもムーストップも好きなんだよ。 ―じゃあ、最後に、ベスト盤まとめてどうでした? D:うーん、そうだな………こういう音楽ってどこにも属してないと思ったね。もちろんJ―POPとは全然違うし、かといってアンダーグラウンドな音楽とも違うでしょ。あらためて居場所がないんだなーと思ったね。他に共通項や同じ目標がもてるようなバンドがないんだよ。少なくとも日本ではストレンジャーだなぁ。まあ、大きく言えば「ロック」だとはいえるんだけど、何にも似てない、誰とも違うわいと。 ―たしかにジャンルわけは難しいですね。僕は、このアルバムは昔の曲をやっているけど「今」のアルバムだなと感じました。より「ズボンズ」だなと。 D:ベスト盤だからな!(笑)そうなんだよ、どこにどう属しているのかという悩みと、このまま突き詰めていったらどこまでいくのかなという興味と、両方あるね。 ―それを余命もわずかだから突き詰る方向で?(笑) D:そう、余命を惜しんでね(笑)。でも本当はそれが当たり前のような気がするんだよ。日本ではどこかのジャンルに属していないと受け入れられないような雰囲気があるから、そういう中で自分達の立ち位置の難しさみたいなのを感じるけど、一方で誇りもある。誰がズボンズみたいな音楽やってるんだってね。15年間ずっと自分たちの音楽をうち立てようという気持ちでやってきたからな。だからまぁ、6対4くらいで満足するしかないんじゃないかな。 ―結構ギリギリじゃないですか(笑) D:そう、ギリギリ(笑) ■□■□■ |